当店でお誂えされたお客様にお話しをお伺いさせて頂きました。お客様の用途は様々で、お好みもそれぞれ異なります。静かな色合いを好む方から、おしゃれで目立つ装いが似合う方まで、ひとりひとりの個性も違います。それぞれのお客様の事例をご紹介させて頂きます。
目次 |
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1、なごみ邸 斎藤好貴様のご紹介 2、仕立上りを羽織ったら、最初から身体に馴染んだのです。 3、着物との出逢い 4、着物の良さは、季節の移ろいを感じられること 5、男着物.comとの出逢い 6、斎藤様が考える、いい着物を誂えるコツとは? 7、男着物初心者へのアドバイスは? 8、男着物.comの評価 |
― 本日はどうぞよろしくお願いいたします。まず、齋藤さまについて教えてください。
はじめまして。横浜市で日本家屋の多目的貸しスペース「なごみ邸」を経営しております。今年で48歳です。茶道の会にうかがったり、また趣味で謡いや能をたしなんでおります。これまでは特別な催しのときに、黒紋付に袴を着ておりましたが、今年になってはじめて自分用の着物をあつらえました。
たちばなやの橘川さんには、本当にすばらしいものを見立てていただき、感謝しております。
齋藤様の経営する多目的スペース「なごみ邸」
>> なごみ邸のサイトはこちらから
― 新しいお着物を身につけられたご感想をお聞かせ下さい。
仕立て上がりを羽織ってみたら、最初から体にしっくりと馴染んだのです。「あっ、着やすいな。袴も穿きやすいな」と。着物って、着慣れるまでは違和感のあるものなのですが、まったくそれがない。着つけていても非常に楽ですし、たちばなやさんの仕立てはすばらしいと感じました。
風合いもとてもよいですしね。想像していたもの以上の仕上がりに大変満足しております。
実は、最初に考えていた予算より、ややオーバーしたのです。しかし、値段で妥協するよりも、より良いものを、長く、気持ちよく着ていきたいと思いました。そうすることによって、着物を着た私を見た方からも、いい感想を言っていただけるんです。 実際に、家内からは 「すごくいいんじゃない? 色合いもバランスもいいし、とてもあなたに合っている」 と言ってもらえました。うれしかったですね。
― 齋藤さまの、着物との出会いについてお聞かせ下さい。
着物を着るようになったのは、10年ほど前に趣味で能をはじめたときでした。
母方の祖父が能を教えていたものですから、小さいころから自宅稽古の様子を見て育ったのです。祖母も茶道をやっていて、常にそういった文化の方が出入りするという世界でした。とはいえ、私の着物は、もっぱら黒紋付に袴でした。能の舞台のために着るものですからね。
― ご自分用の着物をおさがしになられたきっかけはなんですか。
なごみ邸で定期的にひらいているお茶会がきっかけです。よい着物でみなさまにお目にかかりたいという気持ちがありまして、たちばなやさんにうかがいました。
よい着物をあつらえていただき、気持ちがいいですね。さっそくお茶会に出ましたら、みなさまから「素敵ですね。一緒に写真を撮ってください」と言っていただけました。はずかしい気もしましたが、やはりうれしかったです。
なごみ邸の茶室にて
― 齋藤さまにとっての「着物の良さ」とはなんですか。
四季のうつろいを心と体で感じられるところです。
着物は色彩も素材もとても繊細で、季節感をよく映しているものだと思います。
着物を身につけていると、その四季の感覚が体を通して心に入ってくる。たしかに洋服にも季節感はありますが、やはりこの「心と体の一体感」となりますと、
和装に勝るものはないと思っています。
インターネットで「男の着物」と検索しました。
何軒かのホームページを拝見したなかで、たちばなやさんの、気取らない、さりとて崩していない、バランスのよさが気に入りました。取り扱われている着物の質が低くないということはすぐにわかりましたし、価格も高すぎない。
お店も自宅から車で30分程度でしたので、まずはお話しをうかがってみようと思いました。
― 男着物.comに来店時の印象をお聞かせ下さい。
大々的にかまえたお店ではなく、何代か続いている呉服屋さんなんだろうなとすぐにわかりました。橘川さんの見立て眼がすばらしかったのです。
最初は「お茶会に着てゆける着物がほしい」と相談しました。そうしてほんの30分程度でしょうか、お茶をいただきながら雑談しているうちに、橘川さんが「齋藤さまにはこういった色合いがお似合いですよ」と、3点の反物を出してくださったのです。
どれもこれも、私の気に入るものばかりでした。橘川さんは、私を見て、何気ない話をするうちに、私という人間の雰囲気を的確に感じとってくださったんですね。
着物は、色合いはもちろん種類も数多にございます。「好きなものを選んでください」と言われるよりも、こうしたコミュニケーションによって良いものを見立ててくださるほうが助かります。
最終的に、その3点のなかから、私に一番似合うものを選んでいただきました。自分で着てみても、しっくりくるなと感じました。
― ご購入にあたって、ご心配な点はございませんでしたか。
心配も不安もまったくありませんでした。
もちろん、橘川さんの最初の見立てがすばらしかったこともありますし、十分に納得してから注文させていただきました。
橘川さんも、私がまったく着物を知らない人ではない、つまり「恰好で入りたい」という人間ではないということをわかってくださったようでしたから、良いものをおすすめくださいましたし、説明もしっかりしてくださいました。
寸法をとるにしても、着付けの仕方にしても、スムーズに会話がすすみました。
橘川さんのお話しを聞いていると、どんな風に仕上がるのかがはっきりと想像できました。
― いい着物を買うためのアドバイスなどがございましたらお聞かせ下さい。
いい着物をおもとめになるなら、まずはいいお店を見極めることですね。
高級店に行けば間違いはないかもしれませんが、そこは懐具合との相談。いかに自分にあった着物をあつらえるかどうかは、お店、そしてそこにいらっしゃる方との出会いで決まります。
百貨店のように、あふれる品物のなかから本当に自分に合うものを見つけ出すのは大変なことです。やはり、一対一のコミュニケーションで、自分のニュアンスと、外から見た感覚を、的確にとらえてくれる感性と経験を持った方とお話しすること。そして、それだけの品ぞろえのあるお店を選ぶことが大切でしょう。
洋服は既製品を選びます。でも、着物は反物から選びますでしょう? そこを楽しむのがいいでしょうね。「この反物が、自分の着物になるのだ」というイメージを持って呉服屋さんとのコミュニケーションをもたれると、より良いニーズを引き出していただけると思います。
今回、たちばなやさんと私の出会いはインターネット上でしたが、デジタル社会になればなるほど、いかにふれあうこと、コミュニケーションをとることが大切なのかということを、着物は教えてくれましたよ。
― はじめて着物を買う男性へのアドバイスなどはございますか。
はじめて着物を着られる方ならば、最初はきっちりしたものをお求めになるほうがいいでしょう。
歌舞伎の海老蔵さんが、浴衣をてろんと着流している姿にあこがれて、よく若い方が安物の着物を着崩している姿を見かけますが、私はあれはあまり良いことには思えません。だらしないのです。
着物には一定のルールがあります。まずは着物の感触と良さを知り、自分の体と着物がマッチさせること。その上で、襟足を崩したり、はだけさせたりする。そこが「粋に着る」のと「だらしない」の違いです。
心が和装でないのに、ファッションとして着物をあつらえても、本当の着物の良さは楽しめません。気構え持つことは大切です。
海老蔵さんは、着流していてなぜかっこいいのか。それは、小さいころから着物の所作やTPOを徹底的に訓練して身につけていらっしゃるからです。
日本人は、もともと着物の似合う体型です。着物を着たときの歩き方のほうがずっと心地よいですよ。日本人だから楽しめるもの。心から楽しまないともったいないですから。
― さいごに、たちばなやへの評価とメッセージをお願いいたします。
何度も申し上げますが、コミュニケーションですべてがわかる。橘川さんは、そこがプロです。男性の着物専門店として、男性の着物に対する見方やスタンスがしっかりおありですし、非常に気さくな方とお見受けしております。あまり「商売、商売」というニュアンスをお出しにならないので、「着物ってどういうものだろう? 着物はなにがいいんだろう? どんなものがいいんだろう?」という、着物に対する素朴な疑問も気軽にぶつけられる方でしょう。
着物のことがたとえわからなくても、食べ物、趣味、行きたい場所、なんでもお話しすることで、自分にあったものを見つけてくださるはずです。
はじめて自分であつらえる着物が非常に満足度の高いものとなり、本当にうれしい気持ちでいっぱいです。大変感謝しております。たちばなやさんの今後ますますのご発展を、心よりお祈り申し上げております。
※ 取材日時 2010年4月
※ 取材・制作 カスタマワイズ