季節の装いのQ&Aをご紹介しています。
A. 紗の生地は、全体に透け感があります。絽の生地は絽目と言って、近くで見ると細かな長方形が並び、透け間があります。まずは、下の写真をご覧下さい。
もう少し詳しく紗と絽の生地の違いによる活用法をご説明していきましょう。
紗の着物は全体に透けているので、着物、羽織ともに向きます。特に男性の着物の場合、紗の羽織は非常に実用的で幅広く着ることができます。紗の素材の羽織は、1枚持っておくと非常に便利です。絽の着物の方は、どちらかと言うと紗の着物に比べてかっちりした正装のイメージです。絽の羽織や絽の着物と言えば、紗の着物よりも格式高い印象ですから、例えば、茶道の正装では紗ではなく絽の着物を選びます。
落語家の夏の装いに見られるように、夏の正装では、絽の無地の着物に染抜き紋を入れたものを見かけます。絽の着物の場合には、だいたい白生地を染めて作る場合が多いと思います。それは、産地でも絽の無地の染め上がりの反物として作られていないからです。紗の場合は、各色、色無地の織物として、反物が織元で作られておりますので、染め上がりの織物として選ぶことも可能です。ただし、色数が少ないので、紗の白生地から染めて作ることもおすすめです。紗は無地の織物で反物としてメーカーで作っているのもありますが、絽の無地の反物は産地でも見たことはありません。
好みの色に染めて自由に作ることのできる絽の着物は、夏の正装として非常に素晴らしいものです。また、紗の着物も夏の装いには実用的で欠かせないアイテムです。紗の着物の場合は、無地の地紋だけでなく、一部織柄の入ったものがあります。例えば、紗紬(しゃつむぎ)といって、紬風で透けているのもあります。これは、洒落物として7月から8月の夏盛の時期や、陽気によっては6月の中旬ごろから着ることができますので、活用の幅も広く、凝った装いの着物や羽織が楽しめます。
絽の着物や羽織の場合、縫紋以外に染め抜き紋を入れる方もおります。しかし、紗の着物や羽織の場合には、染め抜き紋より縫紋を入れる方がふさわしいでしょう。それぞれ用途によって異なりますが、夏の装いとして、紗も絽も欠かせない素材です。
また、絽と紗といえば、正絹の素材を思い浮かべますが、化繊素材でも男物として広幅の反物が作られています。とても便利で素晴らしい時代になったものです。
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