男着物・家紋についてをご紹介しています。
Q. 男性につける家紋にはどんな種類があるのでしょうか?
A. 男性の着物や羽織に付ける家紋には、「縫い紋」と「染め抜き紋」の2つのタイプがあります。
「縫い紋」は、縫い糸で刺繍のように家紋の輪郭を表現したものです。主に男性の紋に使われるのは「芥子(けし)縫い」と「まつい縫い」です。
「芥子縫い」は、点線がつながるように縫っていく方法で、「まつい縫い」は、一目刺しては半目戻りながら、フランス刺繍のラインステッチの様に線を作っていく縫い方です。「まつい縫い」の方が、全体の輪郭がはっきりとして見えます。
ちなみに、女性の紋の場合は、横糸で埋めていく「スガ縫い」や、「相良(さがら)縫い」「加賀紋」などのおしゃれ紋があります。
一方、「染め抜き紋」というのは、正絹の場合の方法で、白無地の生地に紋糊を置いて染めた後、糊を落として「上絵(うわえ)」という紋を描く方法です。化繊の場合には、「刷り込み紋」という「染め抜き紋」に代わる方法を用います。
「刷り込み紋」とは、白い顔料で上絵を描く方法です。水洗いしても落ちることがありませんので非常に便利です。ただし、正式な染め抜き紋と比べると、胡粉(ごふん)のようなもので描きますので、どうしても質感が落ちます。それぞれ違いがありますが、これらが実用的な着物でよく使われる方法です。
さて、「刷り込み紋」よりもっと簡単な紋として、「貼り紋」があります。「貼り紋」は、ワッペンやシールの様にして貼りつける方法です。これは長い何年が経つとはがれやすくなるという欠点があります。何年も先まで見越して考えるなら「刷り込み紋」の方をおすすめします。
もし、「貼り紋」にするのでしたら、手拭で当て布をした上から、アイロンを軽く当てておくと、はがれ難くなります。「貼り紋」でも、丁寧に仕上げる場合は、上絵のように描いた絹の貼り紋をして、その周りの輪郭を縫って取り付けることもあります。これはかなり丁寧な方法ですので、そう多くはありませんが、仕立屋さんや紋屋さんによっては、このように丁寧な「貼り紋」をしてくださることもあります。
紋の使い方は後でまたご紹介しますが、「縫い紋」は略式で、正式な紋は「染め抜き紋」と覚えておかれるといいと思います。略式の「縫い紋」は、羽織などによく使われ、茶道などでは着物の背中に入れます。正式な紋としては、「黒紋付」をはじめとして、羽織・着物ともに染め抜き紋で5つの紋を描きます。